インタビュー通信制

不登校から、ホリエモンがつくった通信制高校「ゼロ高」へ。引きこもったからこそ気づいた「行動」が大切な理由

「これを勉強して、何につながるんだろう」

義務教育を終えた人なら、一度は思ったことがある疑問ではないでしょうか。

高校に入ってもその疑問は解消されることなく「テスト」のための勉強を続けてきた、という人も多いと思います。

そんな教育の流れを変えるべく、ある高校がつくられました。堀江貴文氏が主宰する通信制高校「ゼロ高」ことゼロ高等学院です。

「未来を恐れず、過去に捉われず、今を生きろ」

「座学を目的とせず、行動を目的とする」

刺激的な理念を掲げ、顧問には『ビリギャル』作者の坪田信貴氏やモテクリエイターゆうこすこと菅本裕子氏など豪華な顔ぶれも。

生徒たちは座学だけでなく、堀江氏が主宰するオンラインサロンHIUなどにも参加し実際に「行動」しながら学んでいきます。

「学ぶ」だけでなくそこから「どう行動するか」が問われる新しいカタチの高校――ゼロ高を選ぶのは、どんな高校生なのか。

ゼロ高0期生のひとりである油布弦己さんに話を聞きました。

不登校・ひきこもりから、ゼロ高へ


ツイッターのプロフィールに「元不登校・引きこもり」と書かれていましたよね。


そうですね。


「引きこもり」から「行動」を理念とするゼロ高に入学したきっかけがとても気になって。

そもそも油布さんが学校に行かなくなったのは、なぜなんでしょうか?


それは…校歌ですね。


…校歌?


昔ながらのルールを大切にする学校だったので、校歌を大きな声で歌っていないと注意されることがあったんですよね。ほかにも眉毛に前髪がかかっていると指導されたり…

あとは、学校特有の同調圧力も苦手でした。

クラス全員で、ひとりの子の悪口を言おうという流れになったことがあって…。誰かを陥れるようなことを「みんなでやろう」という雰囲気がすごく嫌だったんですよね。

同調圧力がないからこそ見える、同級生の個性


そんなこともあって中学のときから学校に行かなくなったのですが、家にいるあいだ既存の教育制度について調べてみたんです。

すると、インターネットも発達し、どこでも誰でも学べる環境が整いつつあるのに、今でも学校では古い教育制度がそのまま使われていることが分かって。

その制度を維持するために、厳格なルールや「みんな一緒」という価値観で生徒を押さえつけていることに疑問を持ち始めたんです。


なるほど。


現状のルールや雰囲気を変えようとするよりも、自分にあっている選択肢を探すほうがいいのでは…と考えていたとき、堀江さんのツイッターでゼロ高を知りました。

そこで、すでに入学していた全日制の私立高校を退学して、ゼロ高に転入したんですよね。


決断力がすごい…。そこまでするゼロ高の魅力はどんなところにあるのでしょうか。


いちばんは自由なところですね。さっきいったような無意味なルールや「みんな同じ」の同調圧力がないところ。

実際にゼロ高生と話してみると「本当はひとりひとり個性があるんだ」っていう当たり前のことが実感できたんです。僕も不登校や引きこもりだったことをオープンに話せるし、ゲームや宇宙、ITなど自分の好きなものに熱中している子もいる。

岡本
自分のことや、興味があることを話しやすい雰囲気があるから「個性」が見えやすいんですね。
通常の学校だと「ばかにされるかも」と不安で、メジャーなカルチャー以外の話題は出しづらいこともありますもんね。

生徒コミュニティが、気軽に「行動」できるきっかけに


ゼロ高では「座学を目的とせず、行動を目的とする」という理念を掲げていますよね。

油布さんは今「行動」していることはありますか。


ゼロ高生同士のfacebookグループで、イベントを企画したり、事業アイデアを話し合ったりしています。

今僕が参加しているのは「ドローンを自作しよう」というプロジェクトですね。

ドローンに興味がある子の発案で始めたプロジェクトなのですが、なるべく安く作ることで普及させ、将来的には農薬を散布するときなどの実用場面にも使ってもらいたいね、と話しています。


誰かの「やりたい」という思いから、自発的にプロジェクトが立ち上がっているんですね。


そうですね。ただこういう話をすると「私はまだやりたいことがないから行動するのは無理だ」と思ってしまう人もいると思うんです。

でも僕は、ゼロ高に入る前から「これに打ち込みたい」と決まっている必要はないと思っていて。行動してみることではじめて自分の興味があることが見えてくることもあると思うんですよね。


好きなことがあるから「行動する」のではなく、「行動する」から自分が何に熱中できるかが分かっていくということですね。


そうですね。みんなが立ち上げた多種多様なプロジェクトに参加してみて「これは面白い」と感じたら、自分からまた行動を起こしてもっと深めていけばいい。これは違うと思ったらまた別のことをやってみる。

そんな風に僕自身も熱中できることを探していけたらいいなと思っています。

学校の「外」と繋がって「社会」を学ぶ


熱中できることを探すという意味では、学校の外でも学べるというゼロ高の環境も魅力的だと思っています。

普通の学校だったら学べるのは学校の「中」だけじゃないですか。でもゼロ高では堀江さんが開いているオンラインサロンHIUに参加もでき、様々な仕事をしている人にも会える。開かれている世界が広いな、と。


たしかに自分が高校生のときを思い出すと、授業と部活の繰り返しで、学校の「外」の世界にまったく目が向いていなかったかもしれません。


学校の先生には「学校で社会の勉強をするんだ」と言われていたけど、社会って本来はもっと多様なものだと思うんですよね。同世代だけで過ごす環境だけが社会ではないと思うので、社会人サポーターの方も含めて、色々な人と学べるのはすごくいいなと思っています。


サポーターということは、先生のように色々アドバイスしてくれるんでしょうか?


「先生」というよりも、どちらかというと「仲間」みたいな存在、でしょうか。生徒が立ち上げたプロジェクトに社会人の方も「楽しそうだから俺も混ぜて」って入ってきてくれるんですよね。


同じ目線で、プロジェクトに参加しているんですね。


そうですね。とはいえ、経験が豊富なサポーターの方は、議論がそれたときにそれとなく方向修正してくれたり、実際にその業界で働いている人を紹介してくれたりすることも多いので、とても心強いです。

引きこもりだったからわかる「行動」の大切さ


最後に油布さんが「行動」を積み重ねてみて感じたことがあれば教えてください。


実は僕、不登校になって「もう人生終わった」と思って引きこもっていた時期があったんですよね。

一方、心のどこかで「不登校や引きこもりに対しての世間の価値観を少しでも変えたい」「自分が実例をつくれば同じ様な状況の人に少しでも勇気をもってもらえるのではないか」という思いが消えなくて。

そこで、ゼロ高に入学するという自分なりの「行動」を起こしてみたんです。

そしたら、少しずつ「行動」の幅が広がっていったんですよね。

様々な個性を持つ仲間とプロジェクトを企画・実行してみたり。最近は不登校の経験をふまえて「学校があわない」と悩んでいる方の相談にのることもはじめてみました。

自分自身が主体的に行動することで徐々に「自分らしく生きることができる環境は自分で作ることができる」のだなと思えるようになったんですよね。

「人生終わった」と思っていた時期から「自分で人生をつくっていきたい」と思えるようになったこと。それに気づくことができるのが「行動が大切」ということの本当の意味なのではないかと感じています。

だから、今悩んでいる人がいたら、ぜひ少しだけ「行動」を起こしてみてほしいなと思っています。

===

(編集後記)

今まで私は「行動が大切」という言葉を、「行動の結果として成果を出し、他者に評価されることが大切」いう少し威圧感のあるフレーズとして受け止めていました。

でも今回油布さんのお話を伺い、行動とは「自分のいる環境を自分で変えられる」という希望に結びつくものなのだと感じることができました。

他者に評価されるためでなく、自分を信じて自分のために動いてみる。そんな「行動」がもっと増えていけばいいなと思います。

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