インタビューフリースクール

不登校になって分かったのは「好きなことを見つけて行動する大切さ」高校生の私が創りたい新しい学びの場とは?


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先日、Wasei代表の鳥井弘文さんが「何かを稼いでいる感覚の正体」というブログのなかでこんなことを書いていらっしゃいました。

――自分にとって辛い経験があったとき、ほかの人や環境のせいにして恨むのか。

もしくは、自分の経験を生かして他者の楽しさや喜びを生み出す人になるのか。

人は、後者のような人を自然と応援したくなる――

今回un-controlでお話を伺ったのは、まさに自分が経験から学んだことをほかの人の役に立てたいと行動を積み重ねている人です。

なんと、彼女は高校生。

「私は、中学のときに学校に行かなくなりました。不登校になった当初は好きなことや打ち込めることがなく自信を失い、落ち込むこともありました。

でも、今は試行錯誤しながら自分の好きなことや得意なことを見つけようとしている最中です。

そして、最近はチャレンジできることも増えてきました。

いつか私の経験を生かして『みんなが好きなことを見つけ、それを伸ばすサポートができる場所』をつくることができたらいいなと思います」

こう話してくれたのは、現在高校生の井阪さん

井阪さんは、中学2年生のときから学校に行かなくなり、フリースクールに通いはじめたといいます。今は高校生活を送りながら、趣味のプログラミングから学んだことなどをブログにまとめています。

ブログには、自分のやりたいことを応援してくれる人を募るために立ち上げたpolcaの話や、今打ち込んでいるプログラミングの話も。

毎日の生活のなかで考えたことや悩んだこと。そしてチャレンジしたこと――

自分の言葉でそのときの気持ちをしっかりとブログに綴っているのがとても素敵で。ぜひお話をしてみたいと、取材をさせていただくことにしました。

井阪さんが中学校生活のなかで感じたことと、そして今新しく創りたいと思っている学びのカタチについてお話を伺いました。

学校に行かなくなって感じたのは「学校の重要性」


学校に行かなくなったのには、なにかきっかけがあるんですか?


それ、よく聞かれるんですけど、実は自分でもよくわからなくて・・・。


おお、そうなんですね。


友だちが嫌とか、先生が苦手とか、学校に行かない理由がはっきりしている人もいると思うんです。でも不登校の友だちと話していると「なんで学校行きたくないのかわからない」っていう人もすごく多いんですよね。


「学校のここが嫌だから行きたくない」っていうのが明確にあるものだと思ってました。


私の場合は、頑張って電車に乗っても、学校に近づくにつれて吐き気が増していくようになって。1駅ごとに電車をおりてトイレに行って・・・結局学校に行かずに家に帰ってきたこともありました。

でも、いじめを受けていたわけでも成績が悪かったわけでもなく。自分でもなぜ学校にいけないのかわからなかったんです。

今振りかえってみると、学校の雰囲気があっていなかったのかなと思うのですが。


雰囲気というのは?


学校って先生1人対生徒が大勢で、授業がどうしても一方的になってしまうじゃないですか。みんなで同じことを一斉にやらなくてはいけない。あの雰囲気が辛かったのかもしれません。


たしかに自由に考えることができる機会も少ないですしね。


それで、中学2年生のときから徐々に学校に行かなくなりました。でも、実は行かなくなっていちばん痛感したのが「学校っていいところもたくさんあったんだな」ということなんです。


おお。それはちょっと意外な感想ですね。


学校って自分でも気づかないうちに、生活のリズムを整えてくれたり、誰かと話すことのできるコミュニティを提供してくれたりしているんですよね。

だから、学校に行かなくなると家にいても何をしていいのか分からなくなってしまって…。


なるほど。


あと、学校は日常生活や勉強のペースを決めてくれると同時に、長期的な見通しを示してくれる場所でもあると思うんです。

大学や就職先について「この大学いくためにこういう勉強したらどう?」とか、「先輩に話を聞いてみたら?」と、いろいろな情報やアドバイスをくれるじゃないですか。

でも、学校に行かなくなると、その機会が自動的になくなってしまう。今までは当たり前だったことがなくなってみると、学校で提供されていたものって意外と重要だったんだなと思うようになりました。


たしかに。学校にいたら授業があるから、学ぶべきことは決まっている。所属するコミュニティも自動的に決まりますよね。学校に行かないとこれらすべてを自分で探して、選択しなくてはいけない。

自己決定できるといういい面でもあり、早い段階からすべてを自分で模索していかなくてはいけないというプレッシャーと隣り合わせでもありますよね。

落ち着ける自分の居場所になったフリースクール


家にいるけど、何をしたらいいかわからない――そんな状況を変えたくて、フリースクールに行きはじめたのが中学2年のときでした。


フリースクールは学校と比べてどうでした?


フリースクールによって形態が全く違うと思いますが、私が行っていたところは、学校のように時間割りが決まっていて、みんなで勉強するというスタイルをとっていました。


じゃあ、学校と同じような雰囲気ですかね?


やっぱり学校と雰囲気は違いましたよね。集まっている人たちの学年やスキルもばらばらなので、授業中は自分のやりたい勉強をやることも多かったです。

時間割はあるけど、進み方は人それぞれというか。普通の学校の一斉授業とはやっぱり雰囲気が違いました。


ブログのなかで「フリースクールに通って、よく似た境遇の同級生にも出会い、自分の世界観が広がった。そのことに、とても勇気づけられた」と書かれていましたよね。


そうですね。フリースクールに行き始めて、自分の居場所がつくることができたのが一番大きかったと思います。そこに行けば誰かと話せるという安心感ってすごく大切なんですよね。

友達が頑張っているから私もやってみようと思える仲間が周りにいるのも嬉しかったですし。

あと、私が行っていたフリースクールは通信制の高校が併設されていたんです。だから時々高校生と話をする機会もあって。高校生活をイメージしやすかったのも、よかったですね。

「好きなこと」「打ち込めること」は、みんなにあるわけじゃない


高校は、また全日制に通い始めたんです。何か新しく打ち込めることを見つけたいとプログラミングも始めたんです。


おお、いいですね!なんでプログラミングをはじめようと思ったんですか?


プログラミングできたらかっこいいなって(笑)


分かります(笑)かっこいいですよね!


でも、実際に始めてみると「こんなモノをつくってみたいな」とか「プログラミングをもっと学びたいな」っていう気持ちがでてきて。

そこから興味が広がって企業にインターンに行ったり、同じようにプログラミングをやっている高校生とつながってコミュニティをつくったり…と、自分の行動を広げるきっかけにもなったんです。


めちゃくちゃいいじゃないですか。


でも、最初は正直「好きなことを見つけるって、どうしたらいいの?」っていうところから始まったんです。私は「こういうことをしたい」というのがはっきりしているタイプではなかったので。

自分でプログラミングをはじめて、徐々に関わる人やコミュニティが増えていって。試行錯誤のなかで、少しずつ「これが好きなのかな?」と見つけていった感じなんですよね。


元から、やりたいことや好きなことがはっきりしている人ばかりではないですもんね。私も大学に入るまで「これが好き」と言えるものがなかったので、すごく気持ちが分かります。

じゃあ、とりあえずプログラミングに挑戦してみようか!と決めても、何から始めたらいいのか、躓いたときにどうすればいいのか。そんな疑問をすべてひとりで解決して、模索していくのはけっこう大変でした。


そうですよね。


そういうときに、「こんな先輩がいるよ」とか「こういうスクールがあるみたい」って情報をくれたり、そもそも私は「どんなことが得意で向いているのか」というのを一緒に考えてくれる存在がいてくれたらよかったなと思うんです。


たしかに。フリースクールがただ「学校に復帰するため」とか「学校に遅れないように」という学校の代替になるのではなく、好きなことや得意なことを一緒に見つけてくれたり、そのための情報を一緒に探してくれたり。

伴走しつつ応援してくれる場所だといいですよね。


それに自分が何が好きで、どう頑張りたいかをしっかりと分かっているほうが、漠然と勉強をするよりもずっとやる気がでるんじゃないかと思うんです。

様々なチャレンジをするなかで、好きなことを見つけられたらいいですし、挑戦していくうちに「こんな世界もあるんだ」って思えるだけでいいのかな、と。

自分がこういう経験をしているからこそ、いつか中学生や高校生が好きなこと、打ち込めるものを見つけて、それをサポートしてもらえるような場所をつくってみたいなと最近は思っています。

学校も、数ある学び場のなかのひとつになったらいい


学校も同じように子どもの好きなことや得意なことを見つけて伸ばしていく場所になったらいいですよね。


そうですね。一方で最初にも言った通り、学校って勉強のペースを作ってくれたり、行事など他者とかかわる機会が自然と用意されていたりするし、そういうところは良さともいえるんじゃないかと思うんです。

だから、自分が学校の「ここはいいな」と思えるところは積極的に活用していくという学校の使い方もあるのかなって。


それ、面白いですね。

最近は「仕事」も、ひとつの会社で働くだけではなく、副業をしたりフリーランスで色々な組織にかかわるなどの多様なスタイルがでてきているじゃないですか。

それと同じで「教育」も、「学校」というひとつの場所だけで学ぶのではなく、フリースクール、塾など多様な学び場のなかで「ここはいいな」と思うところを自分で選択肢、組み合わせて学んでいけるようになったら面白そうだなと思います。


そうですよね。


今って「学校は必ず行かなくてはいけないところ」みたいになってしまっているから、「学校に行けない」ということが必要以上にプレッシャーになってしまっているじゃないですか。

でも「学校は行っても行かなくてもいい。多様な学びの場のひとつとして活用すればよい」という考え方が広がったら、「学校に行けなくて自信をなくす」みたいなこともなくなるのかなと思うんです。


私も昔は「学校は絶対行くべきものだ」っていう思いが強かったんですよね。でも、自分が不登校になってみて、どんなに努力しても学校に行きづらいことってあるんだなっていうのが分かったんです。

学校に行こうと必死で努力をして。それでも行けなくて自尊心を傷つけられる人が増えてしまうよりは、ほかの学びの場所を見つけつつ、学校のいいところも活用していく、っていうほうがいいんじゃないかなと思います。


うん、その通りだと思います。


学校のなかにいると、どうしても「学校だけしか居場所がない」と思ってしまいがち。だから、学校というレールを外れるのは、不安で怖くなることもあると思うんです。でも、学校がすべてではないし、外にはもっと違う世界も広がっているんだよっていうのを、伝えていけたらいいなと思います。

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