インタビュー通信制

3度の飯より開発が好き。期待の高校生エンジニアたちが通信制「角川ドワンゴ学園N高等学校」を選んだ理由

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ある日、何気なくTwitterを見ていたら、こんなプロフィールが目に入ってきました。


足立さんプロフィールページより

「三度の飯より創作が好きな高校生エンジニア:足立素音(あだち・もとね)」

「好き過ぎてプログラミングとか電子工作とかやっていたら、仲間とお金が増えていい感じになってきました。頑張っていきます」

 

 

おお…なんかかっこいい…!!!

 

 

そう思いながら、足立さんのプロフィールを見ていくと、さらに興味深い部分が。

 

「未踏ジュニア2017年度『SmileI/OT

 

未踏ジュニアとは、独創的なアイデアや卓越した技術を持つ小中高生に資金提供を行うプロジェクトです。

足立さんは、プログラミングができない人でも、IOTデバイスをカスタマイズできるシステムを開発。店内に人がいないかどうかを遠隔で確認できるシステムを、あるコワーキングスペースで導入してもらった実績もあるといいます。

お金を集めたり、実際に企業にシステムを導入してもらったり。とても、高校生とは思えない…

 

 

いつからプログラミングをはじめたの?

どんなプロダクトを作っているの!?

そもそも、高校生エンジニアって、どんな高校生活を送っているの!?!?

 

 

 

 

 

…気になることが多すぎる。

 

 

 

そこで、同じ高校の「起業部」というこれまたなんとも面白そうな部活で一緒に活動をしているというテトさんにもお越しいただき、お話を伺うことにしました。

 

通学しなくてもいい高校「N高」って?


今日はよろしくお願いします。まず、おふたりはどのような関係なんでしょうか?


ふたりとも「学校法人角川ドワンゴ学園 
N高等学校」に通っている高校生です。


普段は
N高って呼ばれている学校ですね。


ドワンゴってあの、ニコニコ動画を運営しているドワンゴですか?


そうです。そのドワンゴと、出版社の
KADOKAWAが共同でつくった通信制の学校が、N高ですね。


通信制…。あまりイメージがつかないのですが、どんな学校生活になるんですかね?


N
高には、学校に実際にキャンパスに通うことのできる「通学コース」もありますが、通学をせず(*)好きな場所でネットの授業動画を見て学ぶ「ネットコース」もあります。

*年に5日程度、本校または面接指導会場で行うスクーリングへの参加が必要です。


ネットの授業動画?


そうです。授業をネット上で受けるんです。

実際に見てみます?

こんなふうに画面上に取得すべき講座が並んでいて…


N高ホームページより引用

クリックすると、その単元の動画が始まります。動画を見終わったら次は簡単な小テストですね。これを繰り返していくことで、高校の卒業単位が取得できるという仕組みになっています。


これは、自分のペースでどんどん進めていってもいいんでしょうか?


そうですね。スケジューリングは自分で行います。夏休みの宿題をはやくだせる人は向いているかもしれないですね。


私は最終日にやるタイプなので、ちょっとダメかもしれない…(笑)


自分は、通常は1年かけて行うコースが半年くらいで終わってしまったので、あまった時間で、学校の動画視聴サイトを改善したり、好きなプロダクトを作ったりしていました。


ほお。動画サイトの改善ってどんなことするんですか?


例えば、学校に行く楽しみって授業中にこっそりと友達としゃべることだったりするじゃないですか。でもネット授業だとなかなかそういうことできないんですよね。

だからこんな感じで…

チャットスペースをつくって、友達と会話をしながら動画を視聴することができるようにしました。あとは、どこまで動画を見終わったかわかりやすいように進捗管理の表示を作ったり…という感じですかね。


課題を早くおわらせたうえに、自分で動画サイトを改善しちゃうなんて、すごすぎる。

ドワンゴの一流エンジニアがプログラミングを教えてくれる授業も


そもそもおふたりはなんで
N高に入ろうと思ったんですかね。


N
高は普通の授業だけじゃなくて、こんな感じで様々な分野の専門家が教えてくれるアドバンスコースも受けられるようになっているんですね。


N高ホームページより引用

中学生のときに、このラインナップを見て、「ドワンゴの一流エンジニアからプログラミングを学び放題!?ほかにも専門的な授業が受け放題!?」と驚いて、もうこれは行くしかないな、と思ったんです。気づいたらウェブ出願してました。


気づいたらウェブ出願(笑)

足立さんは、中学生のときからプログラミングをしていたんですか?


そうですね。中学生のころ、ワードやエクセルの練習をするコンピューター部に所属していたんですが、単純作業を繰り返すことに飽きてしまって。

「なんとかならないものか…」と思いコードを書いてみたところ、手作業だと膨大な時間がかかっていたことが、一瞬でできてしまったんですね。

これはすごい、とそこからプログラミングにはまりました。

最初にプログラミングでつくったのは、地元のゆるキャラをモチーフにしたゲームです。今はエラーで動かなくなってしまいましたが(笑)


足立さんの初代作成ゲーム「ぽてくまキャッチ」。足立さんの地元の風景を背景にしており、実際にその地域に雨が降るとゲームの中でも雨が降るように設定されている。


これをある
IT会社の方が見つけて「中学生で開発しているなんて、すごいね」と声をかけてくださって。高校生になったら、その企業でインターンをすることが決まったんです。


おお。スカウトですね。


仕事しながら普通の高校は通いづらいな…と思っていたので、最初はフリースクールなどに通うことを考えていたんです。でも、
たまたまN高を見つけて自分にぴったりだなと思い決めました。


たしかにプログラミングを学びながら、好きなことをやる自由な時間も多いから一石二鳥ですもんね。


僕は高校
1年生まで都立の工業系の学校に通っていて、高校2年生からN高に転校してきました。中学生のときから起業したいなと思っていたので、都立高校での生活がちょっと物足りなく感じていて。面白い学校ないかなって探してたらN高を見つけた感じです。


なぜ起業したいと思ったんですか?


僕には、街をつくりたいっていう夢があって。それを実現するためには起業するのが一番いいのかなと思っているんですよね。


街!?おもしろそう!!


シリコンバレーがさらに科学に特化した進化版みたいな街をつくりたいなと。


街に興味を持ちはじめたのはなぜなんですか?


インデックスとかレールガンというアニメがあるんですが、周囲よりも
科学技術が進歩している学園都市が舞台なんですよね。それが本当にかっこよくて。いつか僕もあんな街をつくってみたいな、と思ったのがきっかけです。

高校在学中に起業。営業も開発も自分たちで


素敵な夢ですね。いまは夢に向かって何か活動しているんですか?


N
高の起業部に所属して、いろいろ活動をしてますね。


起業部?


起業のノウハウを学ぶ講座を受けながら、実際に事業を生徒たちが作ってみるプログラムです。


ちなみにおふたりはどんな事業をしているんですか?


僕は、「シェフデリ」というサービスを作っています。食べログをはじめとして既存のグルメサービスはたくさんありますが、あれって美味しいお店を「探す」ときに使うツールじゃないですか。日ごろからきれいな料理、おいしい料理を「眺めて」楽しむインスタのようなグルメサービスってないなと思っていて。

連携しているシェフの方に、おいしかった料理の写真をアップしてもらい、それを眺めることができるサービスをつくりました。


シェフデリホームページより


掲載させていただくシェフの方には、ご自身で営業を?


そうですね。営業もチームのみんなで行ってますね。高校生のうちから、こういうことができるのは、成功しても失敗しても経験として大きいなと思っています。


テトさんは?


「見て聞いて楽しめる音楽SVR」というサービスを作っています。

人が特殊なセンサーをつけて踊るとバーチャル上のキャラクターが同じように踊ってくれるんですよね。


いや、普通にすごすぎる…。これはどんな感じで実用化されていくんですか?


音楽を聴くのではなく見るというコンセプトで、音が聞こえない方でも楽しめるようなエンターティメントをつくりたいねってみんなで話しています。

ネットで部活!?顔をあわせなくても趣味でつながるコミュニティ


活動の幅が同世代の方と比べて圧倒的に広い気がするのですが、やっぱり何かを突き詰める時間があるという通信制ならではのよさが影響しているんでしょうか?


もちろん時間の余裕もありますが、
N高のように網羅的にカリキュラムが整えられていることも大きい気がしています。

例えば、プログラミングってその技術だけだと使えないものなんですよね。例えば、クックパッドだったら、プログラミングという技術とレシピという情報がかけあわされているものじゃないですか。

だから、プログラミング以外にも、調理コースや声優養成コースなどの様々なコースが学び放題というのは、今後自分をエンジニアとして差別化していくうえでも、本当にいい環境だなと思っています。


わたし高校生のときに、「差別化」なんて言葉知らなったですよ…。


あとは、いろんなことに興味がある人が集まっているので、生徒同士で交流して自分の知識の幅を広げたり、やりたいことがあるときにすぐに仲間を見つけられたりするのも、大きいなと思います。

企業で使われているSlackN高でも使っているんですが、いろんなことに興味がある人が部活としてSlackチャンネルを立ち上げているんですよ。

これは美術部のスラックチャンネルですが…

生徒が書いたものを先生や友達に送って、アドバイスやコメントをもらえるんですよね。


まさにネット上で部活ですね。


そうですね。実際に顔をあわせなくても、いろんなことに興味をもってやっている人がいるので、めちゃくちゃおもしろいですね。

ネットにどっぶりつかったからこそ分かるリアルの良さ


ほんと面白い人が多いと思います。とはいえ、僕は
N高って向いている人と向いていない人がいるなって思っていて。


向いている人と向いていない人?


はい。やっぱり自由な時間が多いので、豊富なカリキュラムを使いたおしたいという意欲がある人は有効活用できるかもしれないけど、何もしないで終わってしまう方も多いかなと思います。


なるほど。


あと、足立とかは中学生のときからパソコンに触れているけど、
N高に入ってから初めてパソコンをさわったっていう人も多くいるわけで。

そういう人にとっては、Slackなどのコミュニケーションツールを使うことに対するハードルが高くて、なかなか活動に参加できないという声を聞くこともあります。


たしかに、そこでつまづくとちょっと辛いですよね。


まあ、コミュニケーションツールとしては、スラックだけではなく通常の
LINETwitterでコミュニティを作っている人たちもいるので。自分にあったツールを選ぶ、みたいなことができたらいいのかな。


たしかにね。あと、
N高に入っているのにそんなこといっているのって言われるかもしれないけど、自分はやっぱリアルな人と人とのつながりも大切だなと改めて思いはじめてるんだよね。


それはすごく分かる。今ってオンラインとかバーチャルとかいうけれど、やっぱり実際そのなかにどっぷりつかってみたことで、リアルな関係性の良さを感じるっていうところもあって。

やっぱり、リアルな体験って自分の価値観への影響がすごく大きいんですよね。N高でも、実際に生徒が訪れることができる教育拠点「Nセンター」を全国各地につくる構想を進めているなど、リアルな交流ができる環境もととのえはじめているみたいです。


ネットでの気軽で広いつながりとともに、リアルでのコミュニケーションがとれる場も同時にあるといいですね。

卒業したら起業?進学?


夢も実行力もあるおふたりが今後どんなことをしていくのか、すごく楽しみです。

 
N
高には「面白い人間を集める」ということを目的に入ったのですが、今は何人か仲間が集まったので、卒業したら起業したいなって思ってます。

街をつくるというのが最終的な目標だけど、とっかかりはなんでもいいと思っていて。エンジニアもいるのでアプリとかつくって、事業化していけたらいいな。


自分は卒業するまでに
50個くらいプロダクトをつくりたいんですよね。進学先としては、キリロム工科大学っていうカンボジアの学校を考えてます。ここでは在学中からIT系の企業にインターンに行くそうなので、楽しそうだな、と。


おふたかたとも、「自分のやりたいこと」を突き詰めて、それにあった学びを自分から探していく姿勢が本当にかっこいいなと思いました。ありがとうございました。

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