インタビューホームスクール

学校に行かず、自分の「好き」を突き詰める―中3のキノコ博士:山下光君と母仁美さんに聞く「自分らしい生き方」とは

 

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さかなクンといえば、魚への熱い思いと深い専門知識でお茶の間の人気者。

では、「キノコ博士」として注目を集めている少年がいるのをご存じでしょうか?

彼の名前は、山下光さん(@hikasukepon)。

光さんは現在中学3年生ですが、キノコに関する知識は大人も顔負け。多いときは、週5日ほどキノコ採集に出かけ、研究会で発表をすることもあるといいます。

ついには、自分でプログラミングをして「きのこ検索」サイトをつくってしまうほど…

実は、光さんは今、学校に行っていません。ホームスクールで「好きなことを好きなペースで」学んでいるからです。

光さんが学校に行かなくなったのは、小学校5年生のとき。それからずっと自分の好きなことに打ち込んできました。

「学校に行く」「まんべんなく学ぶ」といった今の教育の常識にとらわれることなく好きを突き詰める光さんもすごいけれど、それをそばで見守ってきた仁美さんもすごい…

ということで、今回は光さんとお母様の仁美さんにお話しを伺いました。

なんと、光さんはキノコ研究以外にもおどろきの才能の持ち主なのですが、それはあとからじっくりお伝えするとして…

まずは、私も近所の山にキノコ採集に連れて行ってもらいました。

(聞き手:岡本実希 写真:八ツ本真衣)

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よし、私も頑張ってキノコ見つけよ。


あ、見つけました。(開始2分)


ええ、はやいっ!さっそく!?


ベニタケです。


キノコって茶色のイメージだったけど、これはピンク色でなんか可愛いですね。


光はベニタケの専門家になりたいって言ってたんですよ。でも、専門家の先生から「難しいからやめたほうがいい」とアドバイスされるくらいベニタケ研究は難しいらしくて(笑)

キノコって見た目が同じでも、実は種類が違うということも多くて。DNAを調べないと正確な種類が分からないこともあるんですよ。


奥が深い…


あ、あった。


今度はなになに?


おおーー!!!マシュマロみたいでかわいいですね!!上もほんのりピンク色で。


これは、ドクツルタケですね。


ドク…?毒…?


「死の天使」という異名を持ち、1本で人間をひとり殺してしまえるほどの毒性を持つキノコなんです。


可愛い外見して、めっちゃ怖いじゃないですか!!

(早速ドクツルタケの写真撮影と…)


(採集)

そして、どうやらまたキノコを見つけた様子の光君。


アセタケがありますね。


食べると異常に汗がでる毒を持っているので、アセタケというそうです。


ドクツルタケに続き、身近な場所でも意外とおそろしいキノコ多いんですね。


(その後も私が見つけられないあいだに、「あった」を連発して見つけまくる光くん。さすが。)


あった。ヒトヨタケです。


ヒトヨ…タケ?


1日すると溶けてしまうことから「一夜(ひとよ)タケ」とという和名になったそうです。


なんか命名がおしゃれ!ということはこのきのこは今日だけしか見られないんですね。

(ちなみに溶けてしまったあとのヒトヨタケはこんな姿に…)


アンズタケもありますね。


アンズタケは食用としても使われています。あんずのにおいがするからアンズタケっていうそうですよ。


ほお~。豆知識があるとキノコ採集って面白いですね。


(奥が深いキノコ採集を終え、帰路に…)

光さんは、キノコ研究者で、作曲家。かつドラマ制作者!?

光さんは、採集したものは、標本にしたり、顕微鏡で調べたりすることが多いそう。


ちなみに光さんは、キノコのどんなところが好きなんですか?


難しいところ。全然まだ知られていないことが多いから、それが楽しいです。


たしかに未知の世界が広がってますよね。じゃあ将来は、キノコの研究者になりたいのでしょうか?


うーん。将来は…音楽とかやりたいかな。


音楽?


はい。

(パソコンを取り出して、音楽を聞かせてくれた光さん)

実は、光さんはキノコに詳しいだけでなくピアノも全国大会で優勝するレベルの腕前。小学校2年生のときからは、作曲も行っているそうです。

光さんが、作曲した音楽を聞かせてもらいました。

(音楽はこちらから聞けます)


すごい本格的。ほとんどの曲に「道」というタイトルがついてるんですが何か意味があるんですか?


…。(少し恥ずかしそうな光さん)


今、はまってるものがあるんだよね。作っているドラマ見せてあげたら?


ちょっと恥ずかしいんだけど…これです。


おおー!これ、光さんが全部つくったんですか!?!?登場人物も全部光さんですよね!?


はい、自分で3役演じて、合成も編集も自分でやりました。


(光さんが動画編集も全て行っている)


キノコといい、作曲・動画制作といい、なにかに打ち込んでやりきる力がすごすぎる…

ユニークな才能を生かせる「子どもにあった」学び場を

ユニークな才能を発揮する光さんですが、好きを突き詰めてやりとげる秘訣はどこにあるのでしょうか。そばで見守ってきたお母様の仁美さんにお話しを伺いました。


光さんは、5年生のときからホームスクールで学んでいると伺っています。学校に行かなくなった経緯を伺ってもよろしいでしょうか?


光は学校で友達と遊ぶのはとても好きだったんですよね。学校の先生もすごくいい方ばっかりで。

でも、どうしても学校とあわないところもあって。そのひとつが「時間割」だったんです。


時間割?


はい。授業って50分たったら、またすぐ次の授業になるじゃないですか。でも、光はひとつのことにものすごく集中するタイプなので、楽しくなってきたころに次の授業が始まるのが悲しかったみたいで。なかなか切り替えができなかったんですね。


たしかに学校の時間割って、ひとつのことに集中して取り組みたいお子さんにはあっていないかもしれないですよね。


あと、光は興味があることには熱中できるけど、やりたくないと思ったらやらない。だからテストの点数も極端によかったり悪かったりという波がありました。

学校があわないなら塾はどうだろうか、ということで試しにある塾のテストを受けてみたこともあったんですよ。

そうしたら、国語は99点でほぼ満点。でもその次の時間の算数は15点だったんですよね。

分かるはずの範囲だったので光に「どうしたの?」と聞いたら、「1時間目で疲れちゃったし、計算問題がめんどくさくなった」って(笑)


自分の意思がはっきりしているんですね。


ピアノもすごく上手に弾けるし、プログラミングもできる。でも、興味がないことは覚えないから、学校で標準化されたテストを受けて点数で表すと、どうしても劣等生になってしまう。

これって本人が悪いわけでも、学校が悪いわけでもなくて、ただ学校の評価軸と本人があってないというだけなんだと思うんですよね。


たしかに学校はすべて「平均的にできる」ということが求められがちですもんね。


学校に行くたびにぐったりしている光を見てると、これでいいのかなという思いが強くなって。

その頃はすでにキノコに熱中しはじめていたころでもあったし、他にも好きなこともたくさんあった。家にいてそれらに打ち込んでいる光はとても生き生きしていていたんですよ。

それだったら、光にあう場所で過ごした方がいいんだろうと思ったんですよね。


なるほど。


子どもにあっていない評価軸で評価され続けても、かえって自己肯定感が下がってしまう。すごく悩みましたけど「私たちは学校のために生きているわけじゃない。子どものためにいちばんよい場所はどこなのか」ということを真剣に考えました。

「みんなと一緒」であるよりも「自由な人」であってほしい


学校や学校の勉強が苦手だとしても「もう少し頑張ったら、みんなと同じようにできるはず」という気持ちを捨てきれないという親御さんも多いと思います。


その気持ちもすごく分かるんですよね。でも、頑張ればできることと、頑張ってもできないことってあると思いますし、「みんなと一緒のことができるようになってほしい」というのは実は親の願いであって、子どもの願いじゃなかったりするんですよね。


たしかに。子どもは「みんなと一緒のことをやりたい」と思っていないかもしれないですもんね。


親がその願いを諦められるまで、子どもは本当につらいと思うんです。

私も悩むことが多かったですが「これは誰の不安なのか」ということを自問自答して「親の不安を子どもに押し付けないように」ということは常に考え続けてきました。


自分の不安と子どもの不安を分けて考える、ということですね。


あとは、親が「子どもにとってあっていること」を選べるようになるためには、子育てにおける優先順位がはっきりしていることも重要だと思うんです。

私の場合は、光が学校にうまく適合できるようになってほしいという思いよりも「自由な人」になってほしいと思う気持ちのほうが強かったんですね。


「自由な人」ですか?


はい。周りの人や状況に左右されないというか。人から期待されていても、されていなくても、自分らしくいられる人ですね。

私は小さいころから人前で話すのが苦手で、何かを期待されていると思うとすごく緊張しちゃうんですよね。だから光には、どんなときでも「自分は自分のままで大丈夫」と思える人になってほしいと願っていたんです。

だから、学校で良い評価をもらえるかどうかってあまり関係ないなと思って。それよりも「自分らしく」いられる場所を探すほうが優先順位が高いと思ったんです。


なるほど。長期的な幸せのイメージがはっきりとしていることが「みんなと一緒」の圧力からのがれることができるコツなのかもしれないですね。

「好きなことを突き詰めること」は、実はそこまで大切ではない

今、堀江貴文さんや、落合陽一さん、そして乙武洋匡さんなど各界の著名な方がみなさん「好きなことを突き詰めたほうがいい」とおっしゃっています。

光さんは、学校に行かずに自分のペースで好きなことを突き詰めているわけですが、そういう生き方や学び方をサポートしたいという親御さんは増えていくと思います。お子さんが好きなことを突き詰められるようにするには、親としてどんな心構えをもっていたらいいと思いますか?


うーん。親の視点でいうなら、私は「好きなことや得意なことを突き詰めること」自体はそこまで大切じゃないと思っているんです。

だから、光が明日「キノコやめたい」って言ってもそれはそれでいいと思っているんですね。


ええ!?こんなにキノコ研究頑張っているのにですか!?


「キノコに詳しい」ってそれ自体が大切というわけではなくて。それよりも私は「自分を、自分で認められているか」ということのほうがずっと大切だと思っているんですよね。


つまり「好きなこと・得意なことがある」ということよりも、「何が好きであろうと、自分を愛せているかどうか」が大切ということなんでしょうか。


最近は「好きなことを突き詰めるのがよい」という風潮があるから、親も「好きなものを見つけさせなきゃ」「それを突き詰めて得意になってくれたら」と思ってしまいがちですが、それだと「不安だから勉強を一生懸命やらせる」っていうのとあんまり変わらないのかなって。結局親の希望で子どもをコントロールしようとしているから。


なるほど。同じ「好きなことを突き詰める」でも「これから自立して生きていくために好きなことを突き詰めなさい」と親が言うのは少し違うのでは、ということですね。


そうなんですよね。結局「親が言ってるから~~しなきゃ」という不安が子どもにあるうちは「これやってみたいな」って好きなものを見つける余裕もでてこないと思うんです。


ではその根本となる自己肯定感や安心感を子どもがもつために、親はどうしたらいいのでしょうか。


「人と違ってもいい」ということを親がまず認めるということが大切なのかもしれません。

実は、光がきのこにはまり始めたとき、周囲の子から、からかわれてしまうことがあったんですね。そういうときに私は「周りと違うのってすごくかっこいいことなんだよ」ってずっと言い続けてきたんです。

たとえ変わっていようが、逆にみんなと一緒のことであろうが、好きなことをそのまま認めてもらえる、ってことがすごく重要なこと。自分が受け入れられていると感じられることで、自分自身も「そのままでいい」と思えるようになるんじゃないかなと思います。

サポートをしないというサポートの仕方


先ほどは「好きなものを突き詰めること」を親が望みすぎないというお話をしていただきました。一方で、子どもがなにか打ち込めることを見つけたときに、それを適切にサポートすることも、近くにいる大人ができる大切なことだと思うんです。

お子さんの「好き」をサポートするうえで、なにか気を付けていることはありますか?


光が小さいころは、何かに興味を持ったら、その興味を少しだけ広げられるようなきっかけづくりを意識していたように思います。

光はもともとキノコだけに興味を持っていたわけじゃないんですよね。これまでに、色々なものにはまってきました。幼児の頃は「折り紙博士」でしたし、マジックにはまっていた時期もありました。2年生からは作曲にも熱心に取り組んでいて、その後はプログラミングにも熱中しています。

光が何かに興味を持ったら、そのとき、そのときで光にあった場所や人を探しましたね。例えば、折り紙に興味をもったときには日本折り紙協会に入ってみましたし、作曲をはじめて数年たったころには先生を探してみました。

プログラミングに興味をもったときは、最初にネットの使い方だけは伝えて。

そこからは光が自分でプログラミングに詳しい年上の友達にしつこいくらいに聞いて、教えてもらっていました(笑)

最初のきっかけさえ一緒に見つければ、あとは光が自分で好きになった人と友達になっていくんですよね。最近は、採ってきたキノコを買ってくれるレストランのオーナーさんと仲良くさせてもらっているみたいです。「いつでも来ていいよ」って言われたからって、本当にしょっちゅう行ってるみたい(笑)


いろんな世代の人と仲良しなんですね。


自分から仲良くなれる子ばかりではないと思うので、以前こちらの記事:(突出した個性が強みが変わる時代。乙武洋匡さんが考えるオリジナリティを武器にする方法とは)で紹介されていたメンターとのマッチングサービス(※)はこれからもっと広がっていくといいなと思うんですよね。

(※)株式会社WOODYが提供しているマッチングサービス:Branch。「『好き』で自信を創り、『好き』で社会とつながる」をビジョンに掲げ、興味のある分野の専門家(メンター)とお子さんをつなぐサービス等を提供している。数学や物理、折り紙等、多様な興味分野にあわせたメンターと出会うことができる。


でも、もうひかるも大きくなりましたし、最近は「サポートしないことがサポート」なのかなと思っているんです。


サポートしないサポート、ですか?


はい。これは今光が参加している異才発掘プロジェクト“ROCKET”に参加するなかで私自身が学んだことでもあります。

ROCKET(※)は、様々な才能を持つ人が活躍できる社会をつくろうと、ユニークさゆえに学校教育になじめない子どもたちが一緒に多様な学びの場を創造していくプロジェクトなんですね。

(※東京大学と日本財団が共同で主催)

光は当時の担任の先生にすすめられたこともあり、ROCKETに参加しはじめました。


そうなんですね。


ROCKETでは一方的に授業を受けるのではなく、子どもたちが自発的にプロジェクトをつくって実践的に学んでいくProject Based Learningを大切にしているそうです。そのため、東京にとどまらず色々な土地に行くことがあるんですね。

そんなときROCKETでは宿泊先や交通手段の手配を全部子どもたちがするんですよ。遠方に住んでいる子は飛行機を使うこともあるのですが、それも子どもたちが自分で予約して、ひとりで乗ってくるんです。中にはどうしても一人だと難しい場合もあるけれど、そういう子は「助けてくれる人を探しなさい」と。

そんなROCKETの方針を聞いて「たしかにそうだな」と思ったんですよね。サポートをしなければ、子どもは自力でなんとかしていくんだなって。


逆に手を出しすぎると子どもが自分でやる力を奪ってしまう可能性もありますよね。


光は今では「東京に1週間くらい行ってくるね」とひとりで出かけていきます。「サポートしない」くらいがちょうどいいんじゃないかなと思いますね。

学校だけが居場所じゃない。子どもにあった場所がきっとある


最後に、不安との付き合い方について伺いたいと思います。やっぱり親御さんが心配されるのって、「好きなことだけやっていたら、将来この子は自立できないのではないか」「本当に稼いで生きていけるのか」ということだと思うんです。親としてそういった不安はありますか?


不安ですよね。今光がはまっているキノコって、稼ぎづらい領域なんですよ。専門家になるっていっても、ポジションがまず少ないですから。とはいえ、キノコをやめて、高校でいい成績をとって、大学をでたら安心かと言われたら、もうそういう時代でもないですよね。

だったら、心配して悪循環に陥っちゃうよりは、その心配を親が手放すほうが子どもにとっても親にとってもいいのかもしれないと思うんです。


「今」を大切にしていくということですね。


あとは、親って「将来」という遠い未来よりも、むしろ「今」ほかの子どもと比べて自分の子がどうかということが気になってしまうものだと思うんです。


「あの子はこれができるのに、うちの子は…」といった不安のことですね。たしかにそういう心配ってよく聞きますよね。


光もね、以前テレビとかで取り上げられて、ほかの人たちから「山下さんのところはうまくいってていいね」って言われたこともあったんです。

でも、実はそんなことなくて。私、光になにかをさせようとしてうまくいったことってほとんどないんですよ。最低限漢字をみんなと同じくらいかけるようになってほしい、とか、学校の教科学習のようにまんべんなく知識を得てほしい、とか。全部うまくいきませんでした(笑)

つまり何がいいたいかって「あの子はうまくいっている」ってほかの人を見ると思ってしまうけど、それってお互い様というか、お互い自分にない面を見てうらやましくなってしまう、というだけのことだと思うんです。


学校という評価軸から離れても、やっぱり比較ってしてしまうものなんですね。


だから、もう親が、普通だろうが、変わっていようが、何をしていようが「この子はこの子のままで大丈夫」と不安を手放せるかどうかが本当に重要になってくると思います。


さっきもおっしゃっていたように不安なときは「この不安は自分のものか、子どものものなのか」を考え直してみるのが大切なのかもしれないですね。

最後に、同じようにお子さんが学校にあわないと感じていらっしゃる親御さんにメッセージをお願いします。

親も一緒に子どもがやっていることを楽しむといいのかなと思います。面白いことをしている人って、大人であろうと子どもであろうと、一緒にいて楽しいですよね。頭で「こうするべき」と考えるよりも「一緒に楽しむ」という姿勢でいられたらいいなと思っています。

あとは、「子どもの居場所は学校だけじゃないよ」と伝えたいですね。悩んでいる最中はどうしても「学校でみんなと同じようにさせなくちゃ」と思ってしまうけれど、ほかにも子どもにあっている場所がたくさんあると思います。頭で考えるよりも「この子はどこにいるとき、何をしているときに楽しそうなんだろう」ということをよく見て、お子さんにあっている場所を一緒に探してみるといいのではないかな、と思います。

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山下光さん(@hikasukepon)
山下仁美さん(@hikasukepon_mam)