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教材はYoutube!?マレーシアのフリースクールで「好き」をつきつめる健太君の新しい学びのかたち

幼い頃は目に入るもの、手に触れるもの、すべてを新鮮に感じ、毎日が好奇心と学びであふれていました。

でも。学校で椅子に座り、教科書を読み、テストではそれを暗記する。

そんな学びを続けるうちに、小さい頃の好奇心はちょっとずつどこかへ行ってしまった気がします。

「覚えるべきこと」を学ぶのではなく、自分の中から湧いてくる好奇心に突き動かされて学べたら、幸せなんだろうなあ…

そんなことを考えていたとき、あるブログ記事が目に飛び込んできました。

今回の転校は息子の強い希望で決めました。そのためか、毎日遅くまで残って勉強したがり、土日も来ています。

1日10時間は勉強してるんじゃないかな。あまりに熱中するのでハラハラします。

今は数学や物理、生物にハマり、どんどん探求していっています。今彼がハマっているのはフラクタル図形、位相幾何学、複素数、カオス理論、相対性理論など。

数学者になると言いだし、最近ではネットで数学者の人生を読んでは焦っています。「数学を追求するには人生は短すぎる」と言いだしました。

これが本当の学びというものなんだろうな

このブログを書いたのは、マレーシアに住む野本響子さん。

息子の健太君は、今、マレーシアのプログラミングと理数系に特化したフリースクールで学ぶ中学1年生です。

フラクタル図形、カオス理論……私には何ひとつ分からないことばかりだけれど、好きなことにのめりこむ健太君の圧倒的な熱量、そして好奇心にふたをせず隣で見守る野本さんがとにかく魅力的で。

いてもたってもいられなくなり、お話を伺わせいただくことにしました。

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移住の決め手は、マレーシアの子どもたちの笑顔


そもそもマレーシアで学ぼうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?


マレーシアに来たのは、6年前。健太が小学校2年生の頃ですね。

きっかけは、健太の好奇心が強く、日本の普通の学校には合わないかもしれないと思ったからです。昔から「変わっているね」と言われることが多い子で…


どんなお子さんだったんですか?


変わったものに興味を持ち、気になったものにはとことんはまりこむタイプの子でした。

ことわざや四字熟語に興味を持ってずっと調べていたこともありましたし、オペラに興味を持ち、一家でオペラばかり聞いていたこともありました。

毎週、科学博物館に通っていたこともあったのですが、ボランティアスタッフの方を質問攻めにしたり、展示の前からなかなか動かなかったり(笑)閉館ぎりぎりまで気に入ったものを見ていましたね。


小さい頃から、好奇心旺盛だったんですね。


ところが、小学校1年生になってから一気に口数が減って、暗くなってしまい…。学校で繰り返し強制されるドリルなどの教材や、みんな一斉に同じことをしなくてはいけない環境が嫌だったみたいで。

学校を嫌がって毎晩泣いてしまい、最後のほうは児童精神科の先生に相談をしたほどです。


それは心配ですね…。


健太の様子を見ていて、もっと自由な環境で教育が受けられたほうがいいのかな、と。

私がもともと海外で子育てをしてみたいと思っていたこともあり、海外の学校を探し始めたんです。


それがマレーシアだったんですね。


そうなんです。私たちにはずっと交流を続けているマレーシア人家族の知り合いがいました。

健太が生まれる前に、一家を訪ねてマレーシアを訪れたこともあったのですが、街中の大人が子どもたちに優しく声をかける様子が印象に残っていたんですね。

マレーシア人家族の子どもたちに会うたびに、素直でいきいきとしている様子にも魅力を感じていました。

「マレーシアで子育てをしてみるのもいいんじゃないか」

そう思い、こちらに移り住みました。健太のこともありましたが、実は、私がマレーシアに来てみたかった、というのが大きかったかもしれないですね(笑)

知りたいことは自分で教材を探してきて学ぶ「セルフラーニング」


今、健太君はマレーシアのプログラミングと理数系に特化したフリースクールで学ばれているんですよね?


そうですね。フリースクールでは、知りたいと思ったことは基本的に自分で教材も探してきて学ぶ「セルフラーニング」のスタイルをとっているんです。


教材も自分で探してくるんですか?


今は、ネット上に色々な教材があるんですよ!例えば、カーンアカデミーというサイトでは、数学や物理、科学、経済、美術などを学ぶためのコンテンツが無料で公開されていて、それを使うことが多いです。

あと、最近好きなのはYoutubeのNumberphileというチャンネルです。世界中の数学者が自分の専門分野などを説明しているチャンネルで、よく見ています。


面白そうなチャンネル!Numberphileのなかでいちばん好きな動画はありますか?


マンデルブロ集合について説明しているこの動画です。


は、はじめて聞きました。マンデルブロ集合とは…?


今、勉強会ひらいて大丈夫ですか? 本気で説明しようとするとたぶん1時間はかかっちゃいますが…


1時間はちょっと長いんじゃない?(笑)


じゃあ簡単に説明しますね。

座標軸には、X軸とY軸を使うんですが、マンデルブロ集合の場合、X軸は、普通の-2,-1,0,1,2などの実数。でも、Y軸は-2i,-i,0i,i,2iなどの虚数という特殊な数になっています。


う、うん…。i(虚数)ってなんか聞いたことあるようなないような…。


詳細は省きますが、平面上のすべての点一つひとつを無限に循環する関数(反復関数)に入れていきます。その過程で、複素数の原点からの距離が2よりも大きくなったときはマンデルブロ集合から抜け出し、少ないままの場合は内包されていることになります。


う、うん。(すごすぎて理解が追い付かない…)


抜け出した場合はそのスピードに応じた色、内包される場合は黒で塗ってPythonで表してみたのがこれです。


本当に正確なマンデルブロ集合はかけないとのこと


これが数式でできているというのが信じがたい…


今日はここらへんで、やめておきますね!

さきほど紹介したNumberphileの動画は、もっとわかりやすくて正確に説明されているので、ぜひ見てみてください。

好奇心にふたをしないマレーシアの教育とは


今では数学が大好きですが、実は数学に興味を持ち始めたのは最近なんですよ。

6ヵ月前に本人の希望で今のフリースクールに転校したのですが、その前は大して数学に興味はなくて。

転校前にフリースクールの先生たちに「健太君は数学の天才だ!」と言われたのですが、彼は計算も苦手で九九もなかなか覚えられず。宿題はほとんどやらないし、先取り学習もしていなかったので、「先生、何をおっしゃる」みたいな感じだったんですよね。


そうそう、おいおい先生うそでしょ!(笑)みたいな。


でも、フリースクールの先生たちは、好奇心を生かして学びを引き出していくのがとっても上手で。いつのまにか、数学が大好きになっていました。


学校で先生から出された二進法に関する問題の証明をしている様子


子どもが何かに疑問をもつと、年齢に関係なく、大学生レベルの知識まで教えてくれるんです。

例えば、子どもが「タイムトラベルって可能なんですか?」という質問をするじゃないですか。それに対する答えが「ヒントとなる特殊相対性理論という理論があってね…」と答えるといった感じで。


日本だと、小学校1年生の子が「相対性理論ってなに?」って質問をすると「もっと大きくなってからね」と言われちゃう。そうするとだんだん疑問を抱くことへのやる気がしぼんでいってしまう気がするんです。

疑問を持って質問しても「余分なことを考えなくても、正解はこれだから、とにかく覚えればいい」と言われることもあって…


おお…それはつらい。


それに、僕たちが学んでるほとんどの物事は、数年後には間違いになっているかもしれない。そもそも僕たちが知っていることなんて、世の中の真実のほんのごくわずかにすぎないんです。だから数学以外には「絶対の真実」なんてほとんど存在しないんじゃないかなって思うんです。


こちらだと、クリティカルシンキングといって、教わった物事も批判的に考えることが推奨されています。だから、答えがひとつの日本の教育について話すとびっくりされることもあるんですよね。

とにかくよいところを見つけることが自信につながる


マレーシアの先生は、好奇心を伸ばすだけでなく、子どもたちのよいところを探すのがうまいんですよね。

ある日、以前いたインターナショナル・スクールの先生に「お子さんは歌が上手ですね」と言われて。「音楽の授業ですか?」って聞いたら「いえいえ、いつも授業中に歌ってますよ」って言うんです!

「ええー!授業中に歌っててもいいんですか?」って聞いたら、先生が当たり前のように「上手だからみんな喜んで聞いてますよ」と笑顔で答えるんですよね。


最近は、歌だけじゃなくてもっとパワーアップしてるよね(笑)


そうそう(笑)次に受けもった先生に「うちの子まだ授業中に歌っていますか?」って聞いたら「最近は、歌っているだけじゃなくて、踊ってますよ」って!

またまた驚いて「いいんですか?授業中に歌ったり踊ったりなんて」って聞いたら、先生は「周りの子たちがみんな健太君にリクエストするからいいんですよ」って。


ほかにも、タレントコンテストといって、自分の才能を披露する大会が学校で開かれることもあります。絵を描く子も漫才をやる子もいて、とにかく自分の得意なことをみんなの前で発表する。勝つと本当に賞金がもらえるんですよ!


よいところを認める文化のおかげか、みんな笑顔なんですよね。健太がこっちに来たときによく「みんながバナナの口で笑ってる!」と言っていましたが、笑顔があふれている国だなあと思います。

好きなことを分かち合える仲間に出会えたことが嬉しい


素敵な先生たちだけでなく、フリースクールには、個性的な仲間も集まっていそうですよね。この子は面白い!という友達はいますか?


みんな面白いですが、数学やプログラミングが天才的な8歳の男の子を見ていると「とんでもないな!」って思います。僕が書いたマンデルブロ集合のコードを見せたら、パパっと元とは違うジュリア集合のコードに書き変えてきて。すごいな…って思いました。

あとは今、同じフリースクールの友達と一緒にアプリをつくって販売しよう!という計画を進めています。


おお!ちなみにどんなアプリなんですか?


子どもが誘拐されたり、行方不明になってしまったりしたときに、スマートフォンのGPSを使って、とにかく早く情報を取得できるようなアプリです。


ぜひ製品化したら教えてほしい…


あとは、フリースクールの友達ではないですが、前回の記事にでていたきんちゃんの言ってる事一つひとつに興味があります!

「親も一緒に楽しんで学ぶ」北本家が学校ではなくホームスクールを選んだ理由

ゲームのRPG構想も感動したし、あれをC♯でつくるっていうそのセンスも素敵だなと思いました。


一緒の話題を共有できる仲間がいることは本当に嬉しいらしく、いつも数学仲間を探しているみたいです。

私も今健太が何をやっているのかは難しすぎてよく分からなくなりつつあるのですが(笑)、でも健太が楽しそうなので、こちらに来てよかったなと思っています。子どもって面白いんですよ!楽しささえあれば、自分でどんどん学んでいくので。


楽しささえあればなんとかなる!(笑)楽しいから学ぶって、教育のなかで一番重要になっていく考え方だけど、まだ世界中で広がっていない。だからこそ、そんな新しい学びがもっとみんなに届いたらいいなと思います。

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【健太君の作品展示】

好きなことを共有できる友達を探しているという健太君。ほかにも作品をたくさん紹介してもらったので、数学などに興味がある!という方は、野本さんにぜひご連絡いただけたらと思います。

①オイラーの等式を友達に説明したときに作成した資料

②ジュリア集合(変数のcが0.3-0.01iの場合)(Python)

③Lシステムという数学の法則に基づいて描いた木(python)

④おすすめのNumberphile動画
位相幾何学「クラインの壺」という図形の紹介動画(この方の作業場の地下にはクラインの壺の倉庫もあるそう)

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野本響子さん

早大卒。元「MacPower」(アスキー)「ASAHIパソコン」「アサヒカメラ」(朝日新聞出版)の編集者。現在「マレーシアマガジン」編集長。子供の通うKidocodeにも勤務しつつ、マレーシアの教育事情について取材を重ねている。ブログ「世界が好き「マレーシアでちょっとだけ子供の教育を考えた」更新中。